› ラムネ屋トンコ › 2016年05月

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2016年05月17日

第98回 昭和38年夏 幼稚園の先生に? 


高校3年の7月の就職試験の翌日、キリスト教会付属幼稚園の園長先生が、我家に来られた。
「就職試験を受けたのですか?」と、園長先生が質問なさる。
「受けたのですが、定員オーバーで受からないと思います。」と応えると、ホッとした表情になられた。
「実は、幼稚園で働いて欲しいので、お願いに来たんですよ。」
「としこさんは、楽しく遊ぶことが出来るので、幼稚園の先生に適しています。先日の子ども運動会でも、一番楽しく参加していましたよ。」
「是非、考えてみてくださいね。」と、先生が話された。
私は、驚くと共に嬉しくなる。
「嬉しいです。父母と相談して、お返事します。」と応える。
最近、笑顔を褒められるが、アルバイト中は、いつも笑顔でお客さんと接するよう心がけ、良い店員のお芝居をしている感じだ。
また、お世話になっている人には、笑顔で接しようと思っている。
が、遊びやリクレーションの時は、無意識で自然に笑顔で楽しんでいる。
園長先生が、自然のありのままの私を認めてくださったので、私は今までにない嬉しさと勇気を与えられた気がした。
先生が帰られた後、さっそく母に伝える。
「幼稚園の先生の助手に勧められたの、幼稚園で働きたいの。」と、母も笑顔だった。
翌朝、「お父さんは、小学校の先生になるんじゃーなくて、幼稚園の先生だからいいと言ってるよ。」と母。
早速、幼稚園に隣接している園長先生宅に、私は出向いた。
「昨日は、ありがとうございました。幼稚園で働きたいのですが、音楽に自信がないのです。」
「音楽の勉強をしなければと思います。それでもよければお願いします。」と伝えた。
「それは、嬉しいことです。出来れば、短期大学の保育科に行くことを勧めます。」と話される。
幼稚園の先生のほとんどは短大保育科卒業で、幼稚園教諭の免許を持っていることも知っていた。
2年間、保育の勉強をしたいし、特に音楽の勉強をしてから、幼稚園で働くほうがよいと思えた。
家に帰り「短大保育科に行くことを勧められたの。行きたいな。」と、母に伝える。
「お姉さんも短大に行ったんだから、としちゃんが短大保育科に行くことに賛成よ。お父さんに頼んでおくよ。」と母。
父は反対する理由は無かったらしく、賛成した。
歌は下手で、オルガンは「チューリップ」の曲がどうにか弾けるだけの私は、予想外の大きなチャレンジをすることになる。
  

Posted by トンコおばあちゃん at 20:00Comments(0)

2016年05月07日

第97回 昭和38年初夏 就職試験


高校3年7月、元町通りに買いものに行き、帰りにアルバイト先の洋装店に寄る。
店長であるおばさんに挨拶する。
「駅前の運送会社の社長さんが、『としこ君にうちの会社の受付で働いて欲しいんじゃ。あの笑顔を気に入ってな。』と言うちょってよ。」と、おばさんが話しかけた。
その運送会社からの贈答品の届け先や、他からの贈答品を運送会社に届けた時の挨拶が、丁寧で良かったと、大分前に聞いていた。
「私は、としこさんに東京の洋裁学院でデザイナーの勉強をして、うちの店で働いて欲しいと思うちょるんよ。」とも。
以前、店長が留守だった時のアルバイト中の出来事を思い出した。
「店長は留守。」と伝えると、お客さんが「いいのよ。店長には希望を言いにくいから、お姉さんに頼みたいんよ。」と言ったのだ。
おばさんが注文を受ける時を思い浮かべる。
注文表にブラウスの希望の衿と袖を描き、サイズを測り記入して、服地の端切れを貼っておいた。
おばさんが帰って来て、「急ぐようだったから、一応注文表をかいたけど、もう一度確かめて下さいね。」と伝える。
「ちゃんと、衿や袖が描けるんじゃね。」と感心したようだった。
「絵の教室で、よく見て描くように言われていたから、どうにか描けたんよ。」と応えたのだった。
おばさんは、私がデザイナーにと思ったかもしれないが、スタイル画なんてとんでもない。
働く農家の人や美容師さんを描くのは好きだけど、スマートな人を想像して描くのは、苦手で好きでない。
「デザイナーは無理だわー。」と言って、すぐ店を出たが、運送会社には心が少し動いた
家に帰ると、「隣の笠戸ドックの社長さんが、『船で通勤するのが大変だけど、うちの会社で働かんかな。』と言って下さったんよ。」と母が言う。
「無理よねー。」と、私は船酔いの心配があるし、もし事務職ならミスが多いので迷惑をかけるから、気が進まない気持ちを込めて即答した。
「そーねー。」と、母も同感のようだ。
7月の期末試験が終るとすぐに、会社の就職試験が始まる。
私の高校2人採用の会社に、私ともう1人が採用試験に申し込んでいたので、その会社に出向く。
行ってみると、我校の応募者は3人で、他の2人ともよく知っている人で、驚いた。
2人には身内の人がこの会社にいるらしい事がわかり、私の採用は無いだろうと思えた。
すぐに、運送会社が頭に浮かんだので、がっかりした訳ではなくホッとする。
大会議室に机と椅子が並び、50人以上の男女高校生が着席し、試験問題が配られた。
私は、試験を放棄したい気持ちだが、答えは記入する。
が、ミスを調べる点検はしないことにした。
次に、面接試験会場に行くと、会社の面接官らしい数人が前一列に座り、3人の高校生が対面して着席。
初めに、面接官が「順番に自己紹介をして下さい。」と指示し、上から目線で観察しながら、自己紹介を聞き始めた。
3番目の私は、その丁寧な自己紹介を見聞きし感心しつつ、目の鋭い上司いる会社で、働きたくないと感じる。
無表情で自己紹介をし、趣味の「新舞踊」の流派は何かと聞かれたが、思い出せなかったので、「忘れました。」と応えた。
たぶん、不合格と思い、それがいいと気分よく帰宅し、母にいきさつを伝えた。
母は、隣の市への通勤も心配らしく、ホッとしたようだった。  

Posted by トンコおばあちゃん at 10:05Comments(0)