ラムネ屋トンコ

幼稚園では毎朝、出席ノートにシールを貼ることになっている。
園に少し慣れた頃、園に着いて通園カバンの中を見ると、入れたはずのノートが見当たらない。その時は園の帰りに、我家の近くの切戸橋の近くのお店のおばさんが、私を呼び止めた。「朝ね、外から店の中に飛び込んできたんよ。」とノートを手渡してくた。
今朝は、園に着くと、確かに持って出たカバンがない。切戸橋を渡っている時、バスが来たのを思い出した。橋は幅が狭くバスとすれ違う時、排気ガスが臭くてとても息苦しい。バスが来たとたん、私はカバンをグルグル回しながら、逃げる癖がある。その時、カバンが飛んだに違いない。そのうち、何時ものように出てくると思った。すぐにカバンのことは忘れて、みんなと楽しく遊んで、元気に家に帰った。
次の朝、通園カバンが無いのに気が付いたのは、姉。お弁当を入れる袋を、姉が貸してくれたので大丈夫。私は気分よく出席ノートが無いまま、弁当だけを入れた袋を持って、幼稚園に着いた。年中組担任のれいこ先生は、私が忘れ物をすることに、慣れているようだ。れいこ先生が優しいので、私は先生も幼稚園も大好きになった。
幼稚園から家に帰った時、あの店のおばさんがやって来て、「バスで市内を一周して、帰ってきたんよ。」と通園カバンを差し出した。ある人が、バスの窓から中に飛び込んできたカバンに、住所が書いてあるのを見付けたそうだ。おばさんの店の近くと分かって、ついでがあったので届けてくれたのだ。ラムネを作る手伝いのおばちゃん達が大笑いしたので、私も笑ってしました。
その後、バスが来た時、カバンをグルグル回しながら逃げる癖が、出ないとよかったのですが、当分の間続いた。