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2015年12月13日

第92回 昭和38年新年 煙草

第92回 昭和38年新年 煙草
第92回 昭和38年新年 煙草
年末は、近所の美容院で楽しくアルバイトをし、夜は例年通り、テレビを観たり、百人一首を詠んで過ごす。
高校で、古文の授業があり、古い詞に慣れてきたので、内容の意味が分かるようになったので面白い。
三学期が始まり、購買部の仕事をしていると、3年の男子達の煙草の臭いが気になる。
最近、3年男子が便所にかくれて、煙草を吸っているらしいとのうわさを聞いたが、事実だと分かる。
我家では、父は煙草を吸わないが、清涼飲料の仕事をするおじさんや、田舎の祖父が吸っているので、臭いで分かるのだ。
祖父は、刻み煙草を小さく丸めて、細長い煙管(キセル)の頭に詰めて、美味しそうに吸う。
胃がんを患っている祖父は、時々痛みに襲われ胃の辺りを押さえるが、煙草をすって和らいだ顔になった。
貰いもののピースという銘柄の缶入り煙草を、おみやげに持って行くと、祖父は大喜び。
半分に切った煙草をキセルに入れて吸いながら、「安物と違って、ピースはうまいのー。」と言って、ゆっくり煙草をふかしていた。
学校の購買部にくる3年男子の煙草の臭いは、おじさんと祖父の煙草の臭いと同じだから、茶色の紙の袋に入っている「シンセイ」だと思う。
が、たまに「ピース」の臭いがして、少々驚いた。
冬になり寒いせいもあり、購買部の昼食用の牛乳が時々売れ残る。
そこで、ある日、思いついたので、「煙草の臭いを消したい人に、買って欲しいんじゃけどー。伝えてね。」と、度々パンや牛乳を買いに来る顔見知りの3年男子に頼んだ。
彼は苦笑いしながら行ってしまったが、しばらくして、数人の3年男子が牛乳を買いに来てくれた。
その頃は、「若いうちから、煙草を吸うのは体に害があるから吸うな。」と言われていた。
もちろん、学校でも「煙草は禁止」だった。
番長との帰り道、「3年の男子が、便所に隠れて煙草を吸っちょるんじゃね。隠れて吸わんと、家で吸えばええのにね。」
「2年の男子が、校舎の影に隠れて、喧嘩したり暴力を振るったりしたらしいよ。隠れてせん方がええよね。」
「隠れてするんは、なんか格好悪い気がするんよ。」
と、私は頭に浮かんだことを喋った。
番長は、頷いたわけでもなく、何となく聞いている感じだった。
しばらくして、「番長が、煙草を吸っているところを見つかって、教職員室に呼ばれたんじゃてー。」と、うわさが流れた。
下校時、番長に聞くと、「校庭で煙草を吸うちょったら、見つかってのー。『今後、絶対に煙草を吸うな』と、言われたんじゃ。今度吸ったら停学処分らしいんじゃ。」と彼。
「もう、学校では吸われんわー。」とも言う。
私は「びっくりしたー。」と返しただけだったが、良かったかなとも思った。
その後も、3年男子の煙草の臭いは続いたので、牛乳が残った時は完売に協力して貰ったが、なんだか変な気分だった。



Posted by トンコおばあちゃん at 17:32│Comments(0)
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