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2014年02月18日

第26回 昭和31年初春 5年生は男女別

第26回 昭和31年初春 5年生は男女別
4年生の3学期に、4月から新5年生だけ、男女別クラスになるといううわさが流れました。
4年生の先生達が、PTAの役員のお父さんやお母さん達に、相談したらしいのです。
男女別にしたら、おてんば過ぎる女子がおとなしくなると、先生達は考えたのでしょうか?
私達はどうなるのかと、興味津津でした。
始業式の日、学校に行ってみると、うわさ通り1組と4組は男子ばかりの組で2組と5組は女子ばかりの組です。
3組だけは男女混合組です。
私達女子組は、4年の時よりおしゃべりでにぎやかな組になった気がします。
先生が、教室や廊下をきれいに掃除することを提案してからは、掃除の時間が一番静かになりました。
お掃除の好きな女子が、教室の教壇や廊下を、ぬか袋でみがき続けます。
だんだん女子組の廊下がピカピカになって、男子組と差がついてきました。
女子組は先生に誉められて、ごきげんになり、ますますみがきます。
気分が悪いのは、男子組です。
掃除が終わる頃、男子達が廊下のゴミを女子組の廊下に掃き入れて、知らん顔をします。
私達女子が掃き返すと、男子は自分の教室の中のゴミまで、女子組の廊下に掃き入れました。
担任の先生が教室にいないので、学年主任の先生の所に訴えに行きました。
事情を話すと、「男子がゴミを掃きいれたので、女子も掃き返したんだね。」
「そういうことを『五十歩百歩』と言うんだ。多い少ないの差はあるけど、どちらも同じことをしているんだ。解決法を自分達で考えなさい。」と、先生が諭すように話します。
私達は、分ったような分らないような感じでしたが、「五十歩百歩ネー」と言いながら教室に帰って、ゴミを掃き取りました。
次の日は校庭で、男子組も女子組も、竹を割って作ったガンザキと言うほうきや竹笹で作った竹ぼうきで、桜の花びらやゴミなどを掃き集めていました。
今度も、男子が集めたゴミを、女子の掃除の場所に掃き入れるのです。
数回そんなことが続きました。
私達女子組は、男子組との境は男子組の掃除が終わってから、掃くことにしました。
小使いさん(用務員のおじさんのことを、その頃はそう呼んでいました)が石油缶で作ってくれたちり取りがいっぱいになりますが、男子ともめないほうが、そうじが早く終わります。
「男子は女子にちょっかいを出したいんよ。」
「ちょっかいやいたずらを、見て見ぬふりをしようやー。」
「負けるが勝ちでいこうやー。」と言いながら、ゴミを焼却炉に持って行きました。
小使いさんが「ご苦労さんじゃったのー。」と言って、ゴミを焼却炉に入れて、燃やしてくれます。
4年生の時あんなに仲良しだったのに、なんだか変です。
6月のある日、「つぎの土曜日、小学5年生の交流会があるので、代表で行って下さい。遠い小学校なので汽車で行きますよ。」と担任の先生が私に伝えました。
「お弁当を持って来てね。男子の代表の聖君も行きますよ。」とも。
私はとても楽しみになり、家に帰って、そのことを母に話ました。
つぎの土曜日、授業が終わって職員室に行くと、「小使い室の隣の家庭科室で、お弁当を食べてね。」と先生が聖君と私に言いました。
家庭科室の長机にお弁当を出すと、小使いさんがお茶を持って来てくれました。
私はお弁当を開いて、少し驚きました。
いつものお弁当と違って、白いご飯のはしにソーセージと私の好きなしょうがの甘酢づけが一列入っているだけです。
だいたい、ご飯の上に塩こんぶか黒ごまがふってあり、おじいさんが持って来てくれた卵で作った、卵焼きも半個分入っています。
そうだ!以前、「聖君が、お弁当をかくして食べるんよ。」と、母に話したことを思い出しました。
母がそのことを覚えていて、聖君のお弁当と似たように作ったのだと、気がつきました。
聖君は新聞紙を開けて、お弁当を隠さないで、食べ始めました。
聖君と同じようなお弁当と思うと、親しくなった気がします。
聖君の方が早く食べ終わり、「今、これ読んでるんじゃ。おもしろいんぞー。」と、字の小さい大人の文庫本を、見せてくれました。
「すごい。難しい本が読めるんじゃね!」と、私は感心して言いました。
表紙の「坂本」の字は見えましたが、下は見えません。
たぶん「龍馬」だったのでしょう。
先生と一緒に汽車に乗ってからも、聖君はずっとその本を、読んでいました。
交流会のある田舎の小学校に、着きました。
初めに、自己紹介と自分の学校のことについての発表です。
次に、壁に貼ってある、その小学校のクラス新聞や学年新聞を、見て回りました。
聖君は、つぎつぎ新聞を読んでいきます。
早く読めるので、またすごいと驚きました。
私達の学校の5年生クラス新聞はうまく作れそうですが、学年新聞は男子組と女子組の仲が良くないので、作るのは難しいと思います。
帰る汽車の中で「市内の違う小学校へ行ったことあるん? 」と聖君に聞くと、「隣の小学校に行ったことあるぞ。」と、応えました。
「まだ行ったことないんよ。」と言うと、「今度、連れていってやるわー。」と聖君。
今日は4年生の時と同じように、聖君と仲良くできて嬉しくなりました。



Posted by トンコおばあちゃん at 11:33│Comments(0)
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