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2015年02月13日

第82回 昭和37年冬 弁論大会

第82回 昭和37年冬 弁論大会
高校1年の正月、同じ組の礼子ちゃんに誘われて、家に遊びに行った。
すると、同級生男子が遊びに来ていて、礼子ちゃんは中学の時と同じ様に男子と親しいなと思う。
百人一首をしたが、私はやはり男子は苦手で、余り楽しくない。
3学期が始まってすぐ、クラス委員が「弁論大会があるので、出場者を決めます。誰か出ませんか?」と、みんなを見回した。
教室がシーンとなり、誰も出たくないようなので、話し合った結果、推薦して選ぶことになる。
数人の名前が出て委員が黒板に名を書いたが、私の名前も含まれていた。
希望者がいないのなら、このクラスは出なければいいのにと思ったが、発言しないことにする。
ここで目立つと選ばれるかもしれないからで、黙っていれば選ばれないと思っていたのだ。
挙手して選ぶ事になり、私に10人の人が手を挙げ、2番の人と1票差で選ばれてしまった。
「私は出られません。主張したい事や意見がないので、出たくないです。」と発言。
「みんなで選んだのだから出て下さい。」と、委員が言って決まってしまった。
私は気分が重くなり、机の上に頭を落として両手で抱え込み、「中学の時、皆が嫌なことを引き受けたからじゃろうか?」と思い、がっくりした。
そのまま頭を上げないでいると、「ごめんね。私にはできんから、お願いね。」と、大好きなえみちゃんがそばに来て頼む。
「としちゃんなら出来るから選ばれたんよ。協力するからやってね。」と礼子ちゃん達も言った。
「私は、やりたくないの。みんなが出とうないんなら、このクラスは、辞退したらええのに。」と私。
「そういう訳にもいかんのよ。」と誰かが言ったので、「そう思う人が出ればええじゃ。」と、私は言いたかったが黙っていた。
その時主張したいことが、芽生えたことに気が付いた。
「生徒会活動は、運動会や弁論大会などあるが、運動会のように希望者が出場するのがよいと思う。私のクラスは、弁論大会出場の希望者はいなかった。みんなに選ばれ、出たくないのに無理やり出る事に。生徒会活動は強制されてするのではなく、自主的に活動するのがよいと思う。希望者がいない時は、辞退できるようにする事を提案します。」と主張しようと思いついた。
帰宅して、一気に生徒会活動についての意見を原稿用紙に書いて、次の日持って行き、昼の休憩時間に礼子ちゃん達に見せた。
みんなは、私が出場しそうなので、安心したようすで原稿を読んだ。
「この内容は、生徒会のみんなを敵に回すことになるよ。」と誰かが言い、皆も同感のようだ。
午後の授業が始まった。
私が弁論大会に出る流れになってしまったので、投げやりな気持ちで、窓の外の校庭を眺めた。
山の上だからか、時々風が強く吹き、昼食のパンの入っていた袋や不用の空き箱が、しばしば飛ばされている。
その時も、ゴミになった袋や空き箱が目に入ったので、私はごみの事を思った。
「パンが袋に入っている間や学用品が箱に入っている間は、袋や箱は大切にされるが、中身が出したとたんにゴミになり粗末に扱われる。ゴミ箱に入れらないゴミは、風に飛ばされたり邪魔になるとか美感を損なうと嫌われ、足で踏まれたり蹴飛ばされる。どうぞ、ゴミになったらすぐにゴミ箱に入れて下さい。又、落ちているゴミを見つけたら、拾ってゴミ箱に入れて下さい。拾う時はお腹の贅肉が取れる運動になるのですから。ゴミ箱に入れば、ゴミはホッと安心できます。」と言う文章が浮かんできた。
家に帰って、風景を思い浮かべながら、読んだら2~3分になる文章を書き、次の日周りの女子に読んでもらった。
「昨日の文よりこっちの方がええよ。」という返事を聞いた後、「今後、絶対に嫌な事は引き受けんよ。」と、私はみんなに強く伝えた。
みんなは納得してくれたので、私はしぶしぶ練習して弁論大会の日を迎えた。
私の順番が来るまで、少し緊張していたので、他の弁論は内容が分からなかった。
数箇所間違えつつも、どうにか終えることが出来たが、気分は良くないので、後の弁論も耳に入らない。
最後の表彰の時、私は3位入賞だったので、「こんなことで、3位だなんておかしい。又嫌なことで選ばれるんじゃないか。嫌な事はもう二度としないぞ。」と、思いつつ先が心配になった。
後で、「生徒会役員は、内容よりも知っている人だからという理由で入賞者を選んだらしいよ。」という噂を聞いて、納得できなかった。
弁論大会の事は、珍しく嫌な思い出として残っている。





Posted by トンコおばあちゃん at 16:10│Comments(0)
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